現在、エコキュートの連絡配管にアルミ三層管が多用されている一方で、架橋ポリエチレン管も人気を博しています。特に、三菱ケミカルインフラテック社製「HCシリーズ」は、その用途に最適な製品として信頼されています。本稿ではHCシリーズの特長とメリットを詳しく解説します。

なぜHCシリーズが最適なのか

ヒートポンプ配管における共通の問題点は耐熱性能です。特に、往き側の出湯温度が非常に高くなり得るため、通常の給湯設計温度を想定した樹脂管では、加速度的に劣化が進み、漏水や内面剥離などのトラブルが頻発していました。このような背景により、エコキュートメーカーが公式に接続承認している架橋ポリエチレン管は三菱ケミカルインフラテック社製のHCシリーズのみとなっているからです。

技術特長と性能

HCシリーズの架橋ポリエチレン管は、CO2ヒートポンプの要求にこたえる特化した設計を有しています。このシリーズの特長は、その卓越した耐熱性能です。通常の樹脂管が高温での使用により劣化しやすいのに対し、HCシリーズは高温環境下でも性能を維持します。これにより、システムの安全性と信頼性が向上し、メンテナンスコストが削減されます。

また、すべての樹脂管に言えることですが、腐食しないため水質に性能が左右されない点です。これにより、水質の硬度が高い地域や塩素濃度が高い水道水を使用する環境でも、配管の耐久性が保たれ、長期にわたって安定した性能が期待できます。

さらに、HCシリーズはエコキュートメーカーから公式に接続承認されている唯一の架橋ポリエチレン管として、その信頼性と安全性が認められています。これは、製品が高い品質基準と性能要件を満たしている証でありユニットにおいても、劣化や形状の変形が極めて少なく、長期間にわたる安定した性能を維持します。

施工と運用におけるメリット

HCシリーズは、施工のしやすさと運用中の安定性を大幅に向上させる数多くの利点を提供します。特に、その柔軟性と耐久性から、狭いスペースや複雑な配管ルートでの施工が容易になります。施工者は配管の取り回しや設置作業をスムーズに行え、時間とコストを削減することが可能です。

また、HCシリーズの振動や地震への強さです。ヒートポンプシステムやその他の機器から発生する震動は、時間と共に配管システムに損傷を与える可能性があります。しかし、HCシリーズはこれらの振動に対して高い耐性を持っており、機器の正常な運転を継続するために不可欠です。また、日本のように地震が頻発する地域においては、地震時の配管の損傷リスクを低減させることが特に重要です。

HCシリーズの便利なラインナップ

邸別に分けられているセット商品「ヒートポンプ配管セットPEX」

「ヒートポンプ配管セットPEX」は、各現場に必要な配管、継手、ケーブルなどを一式セットしており、邸別管理や見積作成がカンタンです。個別に部材を手配しても納期に変わりはありませんが、このセットを利用することで、品番をひとつずつ調べて記入する手間や、邸別の仕分けの必要がなくなります。さらに、セットに含まれる架橋ポリエチレン管の断熱材には、エコキュート用に開発された高耐候性被覆が使用されており、紫外線による劣化から断熱性能の低下を防ぐことが可能です。

「ヒートポンプ配管セットPEX」の明細

品番	仕様	配管長
ECO-PEX3BT	10A×10㎜保温	3m
ECO-PEX5BT		5m
ECO-PEX3BTK	10A×20㎜保温	3m
ECO-PEX5BTK		5m

取付工事の頻度が高い方に人気のある巻物

邸別管理がしやすいヒートポンプ配管セットは利便性が高い一方で、設置作業が頻繁にある方には、長尺の巻物がオススメです。特に、戸建住宅向けには搬送が容易な25m巻が、集合住宅や複数の設備を短期間に設置する場合には50m巻が好まれています。ただし、配管セット付属する継手やVVFケーブルは別途調達が必要となる点に留意してください。

HCシリーズの巻物

ベストパーツオンラインなら、エコキュート連絡配管に適合する呼び径10Aと13Aの保温材厚10㎜と20㎜の巻物を、1巻から当日出荷可能（一部翌日）です。

品番	呼び径	保温材厚	被覆色	長さ
HC-10HON10-T	10A	10㎜	アイボリー(高耐候性)	25m
HC-10HON10B	10A	10㎜	ブルー	25m
HC-10HON10P	10A	10㎜	ピンク	25m
HC-10HON10B50	10A	10㎜	ブルー	50m
HC-10HON10P50	10A	10㎜	ピンク	50m
HC-10HON20-T	10A	20㎜	アイボリー(高耐候性)	25m
HC-10HON20B	10A	20㎜	ブルー	25m
HC-10HON20P	10A	20㎜	ピンク	25m

注意点と解決策

紫外線による劣化

すべての架橋ポリエチレン管は、紫外線の影響を受けないように追加措置を講じなければなりません。怠った場合は、脆化が促進してヒビ割れが発生し漏水します。そのため、屋外で使用する際は、必ず紫外線劣化防止処置をしてください。対策としては、高耐候性の被覆保温材が付いた「架橋ポリエチレン管（品番：HC-10HON10-T）」を使用するか、「高耐候性のテープ（品番：EWD-5010）」を保温材に巻き付けるか、スリムダクトなどの化粧カバーに収納するといった3つの選択肢があります。

曲げ半径の制限

架橋ポリエチレン管は柔軟性が高いものの、最小曲げ半径は150㎜を超えないように注意して配管を行ってください。そのため、タンク下などで小さく曲げなければならない現場には、「アルミ三層管（品番：UPC10-HONT10）」や「エコるーぷ（品番：EL10AH10-20）」をオススメします。

熱膨張による影響

架橋ポリエチレン管は、温度変化による伸縮を考慮して施工する必要があります。特にエコキュートは、熱媒の二酸化炭素を約90℃の高温にして熱交換を介して貯湯タンクの水を温める熱交換サイクルを繰り返すため、沸き上げ最中の湯は非常に高温で架橋ポリエチレン管は伸び、運転停止時は温水が冷めるため縮みます。架橋ポリエチレン管が伸びて保温材から露出してしまった場合、紫外線が管に直接照射し劣化する恐れがありますので「継手用保温材（品番：WJ3H-13）」などを利用して長さ方向に余裕を持った断熱処理を行う必要があります。

継手の選択

継手の不適切な選択は、漏水や機能不全の原因となり得ます。HCシリーズを使用する際は、「袋ナット付アダプタ（品番：KJ18-1310C-S）」、「エルボソケット（品番：KL3-10C-S）」をお使いください。オンダ製作所製の「ダブルロックジョイント」も同一設計ですが、万が一の事故があった場合には管と継手を同一メーカーにしていると対応がスムーズに行われます。

また、架橋ポリエチレン管の継手としては内径シールが圧倒的普及していますが、ヒートポンプ配管の場合は外径シールであることも大切な条件です。というのも、内径シールの場合は継手部の内径が細くなり、流速と流量が変化するためエラーが発生する可能性があるからです。

まとめ

ヒートポンプ配管には銅管、架橋ポリエチレン管、金属強化ポリエチレン管、そしてフッ素ホースの4つの選択肢があります。そのうち、架橋ポリエチレン管には耐食性、運搬性、耐震性という施工上のメリットがある一方、熱収縮が大きいという外観上のデメリットがあります。しかし、それを補って余りある価格の安定という魅力があるので、配管があまり見えない場所に設置するエコキュートには最適です。ただし、エコキュートメーカーが公に接続承認している架橋ポリエチレン管は「三菱ケミカルインフラテック社製のHCシリーズ」だけですから注意が必要です。本稿でご紹介した「ヒートポンプ配管セットPEX」は、そのHCシリーズを採用しているので安心してご利用いただけます。

※この記事は2019年10月15日に公開した記事ですが、校正し直し2021年2月17日、2021年9月15日、2024年3月11日に再度公開いたしました。