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準寒冷地における樹脂管の凍結防止対策には、節電性抜群のエコフィットヒーターがオススメ
ツインセンサーによって高い節電性を実現
今や樹脂管の凍結防止対策の主役は間違いなく自己制御型ヒーターです。1本のヒーターで給水配管と給湯配管を渡し掛けることができるため電源が少なくて済むと好評です。しかし、発熱帯には周囲の温度変化に応じて抵抗を制御する微電流が連続的に流れているため、凍結防止対策が不要な外気温であっても電力を消費し続ける側面もあります。まずは基本的な通電動作をおさらいしてから、「エコフィットヒーター」をご紹介します。
必要な部分だけ加熱する自己制御型ヒーター
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図1:自己制御型ヒーターは、常時微電流が流れ、周囲の気温に応じて部分的に抵抗値を変化させて電流通路の増減を繰り返します。よって、凍結の恐れが無い時期には、電源を抜くか温度センサー付きのスイッチを併用しなければなりません。
従来のニクロム線を用いた主な凍結防止ヒーターは、配管の温度が約3℃を下回ると定格消費電力が流れ、10℃以上になると停止していました。通電している間は、必要ではない部分まで加熱することになり無駄だと感じる現場もありました。そこで、必要な部分だけを加熱する第2の凍結防止対策として登場したのが自己制御型ヒーターです。
自己制御型ヒーターは1本のヒーターでも低温で凍結防止が必要な部分だけ発熱量を増やすことができる点が最大の特徴です(図1)。一方で、発熱帯には周囲の温度変化に応じて抵抗を制御する微電流が連続的に流れているため、凍結防止対策が不要な時でも電力を消費する側面もあります。GSLシリーズには節電スイッチ、DSRXシリーズには自己制御型用サーモスタットを、それぞれ併用すれば外気温に応じて通電停止できるようになりますが別売の為、費用がかさみます。
従来型なのに新しい!エコフィットヒーター
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図2:エコフィットヒーターは、従来型のニクロム線ヒーターでありながら樹脂管に設置可能です。また、通電停止温度を外気温と配管温度の2つのセンサーできっちり制御しているので、必要以上に加熱する無駄な時間を最小化します。
そこで、3つ目の凍結防止対策として登場したのが「エコフィットヒーター」です。エコフィットヒーターの登場により、自己制御型ヒーターを樹脂管用ヒーターと呼ぶ施工業者様が少なくなりました。
樹脂管に使えるフッ素コーティング
従来からあるニクロム線ヒーターにフッ素コーティングを施すことで、架橋ポリエチレン管やポリブデン管、そして塩ビ管に使用しても可塑剤が移行しないため、必要な時だけ加熱するニクロム線ヒーターでありながら樹脂管に使えるようになりました。ですから、給湯側と給水側の樹脂配管に対して、別々に凍結防止ヒーターの電源を用意する現場にオススメです。ただし、発熱帯の長さに比例して消費電力量も多くなる点に注意が必要です。
必要以上の加熱を抑制するツインセンサー
通電制御は、外気の温度を感知する「外気温センサー」と配管の温度を感知する「ヒーター内センサー」の2つを利用しています(図2)。外気温度が約5℃以下で通電される通電動作は、外気温検知式のニクロム線ヒーターと同じですが、停止動作は外気温度約5℃以上または配管温度約45℃以上のツインセンサーで制御されており、必要以上の加熱を抑制します。この説明をすると「エアコンや照明のようにON/OFFが頻繁に行われた場合、電気代は高くならないのか?」というご質問をいただくこともありますが、「エコフィットヒーター」は突入電力が非常に小さい為、ON/OFFが頻繁に繰り返されても電気代が高くなる心配はございません。ですから、暖房度日が2500以上3000未満のいわゆる準寒冷地のように、年に数日しか凍結の恐れが無く通電と停止が繰り返される地域にオススメです。
単位あたり発熱量が少ないので巻き付け施工が必要
樹脂管と保温材の間に隙間があれば、フッ素コーティングによって滑性に優れる「エコフィットヒーター」をスルスル挿入させることができます。しかし、添わすだけのストレート施工で良いとされている樹脂管用の「NFオートヒーター(GSLタイプ)」が11.5W/m、金属配管用の「サーモ一体型水道凍結防止ヒーター(PLDタイプ)」が15W/mといった消費電力量(=発熱量)なのに対して、エコフィットヒーターのそれは7.5W/mしかないため、場合によっては巻付け施工が必要になります。なお、ニクロム線ヒーターの重ね巻きは、事故の元ですので巻付け時にはご注意ください。
保温材厚 | 最低気温 | 管径 | |
15A(1/2) | 20A(3/4) | ||
10mm | -10℃ | ストレート施工 | |
-15℃ | 180mm(巻付けピッチ) | 130mm(巻付けピッチ) | |
1.1m(鋼管1mあたりに必要なm数) | 1.3m(鋼管1mあたりに必要なm数) | ||
20mm | -10℃ | ストレート施工 | |
-15℃ |
選択肢が最も多い!エコフィットヒーターのラインナップ
商品コード | 消費電力(W) | 発熱帯長(m) |
EFH-0.5 | 3.8 | 0.5 |
EFH-0.75 | 5.6 | 0.75 |
EFH-1 | 7.5 | 1 |
EFH-1.5 | 11.3 | 1.5 |
EFH-2 | 15 | 2 |
EFH-2.5 | 18.8 | 2.5 |
EFH-3 | 22.5 | 3 |
EFH-3.5 | 26.3 | 3.5 |
EFH-4 | 30 | 4 |
EFH-5 | 37.5 | 5 |
EFH-6 | 45 | 6 |
EFH-6.5 | 48.8 | 6.5 |
EFH-7 | 52.5 | 7 |
EFH-7.5 | 56.3 | 7.5 |
EFH-8 | 60 | 8 |
EFH-8.5 | 63.8 | 8.5 |
EFH-9 | 67.5 | 9 |
EFH-9.5 | 71.3 | 9.5 |
EFH-10 | 75 | 10 |
EFH-15 | 113 | 15 |
EFH-20 | 150 | 20 |
「エコフィットヒーター」の発熱帯には、可塑剤を含まない高機能フッ素樹脂が使用されていますので、塩ビ管などの異種管に使用しても可塑剤の移行による軟化や破損の心配がありません。その為、前述の樹脂管以外にも、エコジョーズ、エネファーム、そしてエコキュートのドレン配管の凍結防止にもお使いいただけます。さらに、高機能フッ素樹脂の耐熱温度は120℃と一般的なヒーターより高温まで対応が可能なので、住宅用途のみならず産業用途まで幅広く設置することができます。
まとめ
樹脂配管の凍結防止対策には、自己制御型ヒーターが主流になりました。しかし、凍結の心配がない時期でも常に微電流が流れてしまうので、準寒冷地では電気代が高いと言われることがあります。その点、ツインセンサーで加熱が必要な時だけ無駄なく電力を消費する節電性の高い「エコフィットヒーター」は、発熱帯にフッ素コーティングを施してあるので、樹脂管に接触しても可塑剤移行の心配がありません。暖房度日が2500以上3000未満のいわゆる準寒冷地のように、年に数日しか凍結の恐れが無く通電と停止が繰り返される地域にオススメです。
※この記事は2021年12月28日に公開した記事ですが、修正を加え2025年2月10日に再公開しました。
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佐々木瞭
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