
凍結防止ヒーターに種類が多い理由と選定ポイントを解説します!
なぜ凍結防止ヒーターにはたくさんの種類があるのか
凍結防止ヒーターの多様性は、異なる材質や長さの配管に対応するためです。最近では消費電力量やパイロットランプの有無も選定基準として重視されています。各現場に適した凍結防止ヒーターを選ぶためには、多様なラインナップが必要なのです。
選定ポイント1:配管材質に合わせた発熱体を持つシリーズの選択
配管材料は、鋼管から銅管、塩ビ管、そして架橋ポリエチレン管やポリブテン管といった合成樹脂管へと進化してきました。金属配管が主流だった時代には、柔軟性を持たせるために軟質塩ビで発熱体を覆う技術が用いられていました。しかし、塩ビ管が主流になると、軟質塩ビに含まれる可塑剤が樹脂配管を脆化させることが分かり、発熱体の外層に金属メッシュやフッ素などの材料を使用するようになりました。
ヒーター名称 | シリーズ型式 | 適合配管材料 |
IFTヒーター | PLD/D | 金属管 |
エコセブンヒーター | ECO7 | |
レギュラーヒーター | L-RHE/RHE | |
GSLヒーター | GSL | 金属管・樹脂管兼用
※ES/ESLタイプは塩ビ管不可 |
ESヒーター | ES/ESL | |
エコフィットヒーター | EFH | |
自己制御型ヒーター | DSRX | |
ドレン管用自己制御ヒーター | TM | ドレン管 |
選定ポイント2:必要な長さの有無の確認
配管材料からヒーターシリーズを選んだ後は、現場で必要な長さの有無を確認します。特に、サーモスタット型凍結防止ヒーター(PLD、D、ECO7、RHE、EFH)は、必要以上に長いヒーターを選ばないよう注意が必要です。自己温度制御型は重ね巻きが可能なので、給水と給湯を1本のヒーターでまかなうことができます。
選定ポイント3:センサーの特徴と凍結防止能力の理解
ポイントの3つ目は、凍結防止ヒーターを選ぶ際の重要な要素である「センサーの特性」と「凍結防止能力」に焦点を当てています。地域の気温や設置状況に適した凍結防止能力を持つシリーズを決定するために、以下の点を確認する必要があります。
- センサーのタイプ:サーモスタット型と自己温度制御型が主なタイプです。
- 通電温度と停止温度:ヒーターが作動し始める温度と停止する温度を意味します。
- 発熱量(消費電力量):この要素は凍結防止能力を直接的に反映します。
万能タイプの「サーモスタット型」
ニクロム線ヒーターを使った「サーモスタット型」は、サーモスタットの働きで通電と停止を繰り返して無駄な電力消費を削減しています。よって、サーモスタット取付位置が重要です。意外と知られていないのは、サーモスタットには「配管温度検知式」と「外気温検知式」の2種類あるということです。
外気温検知式の場合、サーモスタットを配管に密着させる必要がなく施工が容易といったメリットがある一方で、配管(流体)が温まっても外気温が低い冬場は通電しっぱなしになるため、電気料金の増加や過剰加熱の恐れがあります。
いろいろな考え方がありますが、配管温度検知式の方が無駄なく確実に凍結防止ができると言えます。
長い距離を1本でまかなうことができる「自己温度制御型」
「自己温度制御型」凍結防止型ヒーターは、周囲の温度に応じて自動的に抵抗を調整し、発熱量を増減させます。具体的には、周囲温度が低下すると抵抗が減少し、発熱量が増加する一方、温度が上昇すると抵抗が増加し、発熱量が減少します。この賢い制御により、「必要な箇所を必要なだけ温める」ことが可能となり、給水配管と給湯配管の両方を1本のヒーターでカバーすることができます。
ただし、このタイプのヒーターは常に全体で周囲温度を検知し続けるため、電源コンセントが抜かれるまで微電流が流れ続けます。そのため、別売の節電スイッチを取り付けて電気料金を節約することを推奨します。
通電温度と停止温度、そして発熱量で凍結防止能力を知る
凍結防止能力は「消費電力量×運転時間」で決まります。
たとえば、消費電力が15W/mのIFTヒーターは、3℃で通電し10℃で停止しますが、消費電力が12W/mのレギュラーヒーターは5℃で通電し13℃で停止します。低い発熱量を長い通電時間で補う設計です。現場の外気温の変化を考慮して選ぶことが大切ですが、極寒地では高い発熱量のタイプが推奨されます。
【凍結防止ヒーター 仕様比較表】
シリーズ型式 | 消費電力 | サーモスタット検知方式 | 通電温度 | 停止温度 | パイロットランプ有無 |
PLD | 15.0W/m | 配管温度検知 | 3℃ | 10℃ | 〇 |
D | 15.0W/m | 3℃ | 10℃ | ✕ | |
ECO7 | 12.0W/m | 外気温検知 | 5℃ | 5℃ | 〇 |
L-RHE | 12.0W/m | 配管温度検知 | 5℃ | 13℃ | ○ |
RHE | 12.0W/m | 5℃ | 13℃ | ✕ | |
GSL | 11.5W/m | – | 自己温度制御型 | 〇 | |
ES | 10.0W/m | – | 自己温度制御型 | ✕ | |
ESL | 10.0W/m | – | 自己温度制御型 | 〇 | |
EFH | 7.5W/m | 外気温検知 | 5℃ | 5℃ | 〇 |
DSRX | 14.0W/m | – | 自己温度制御型 | ✕ | |
TM | 14.0W/m | 外気温検知 | 3℃ | 10℃ | ✕ |
※TMシリーズは自己温度制御型でサーモスタット付です。
便利な機能:パイロットランプ
パイロットランプは、凍結防止ヒーターが通電しているかどうかを示すランプです。凍結防止ヒーターの寿命は使用年数ではなく、スイッチのオン・オフ回数に大きく左右されます。そのため、劣化の兆候を「可視化」するパイロットランプは非常に役立ちます。パイロットランプがないモデルの場合は、凍結シーズン前に通電テスターを使って機能確認を行うことが重要です。ヒーターが接続されているにも関わらず故障していて凍結が発生、という事態を避けるためにも、通電確認作業は必須となります。
金属配管用凍結防止ヒーターのラインナップ
IFTヒーター(電熱産業株式会社)
IFTヒーターPLDシリーズおよびDシリーズは、業界最高の15W/mの消費電力量なので、金属配管に「沿わせるだけ」で凍結防止効果を発揮します。配管と外壁の間に隙間がほとんどなく凍結防止ヒーターを巻きつけることができない施工現場に有効です。なお、「巻きつける」と更に厳しい環境下でも凍結防止能力を発揮します。
エコセブンヒーター(山清電気株式会社)
エコセブンヒーター(ECO7)は、節電を重視する方に最適です。このヒーターは外気温が5℃で徐々に通電を開始し、0℃に達するとフル通電状態になります。反対に、外気温が0℃で徐々に消費電力を減らし、5℃で完全に遮断することで、フル通電時間を他のヒーターより短くすることができます。
しかし、外気温度検知式のこのヒーターは、風が強い場所では配管内の急激な温度低下を感知しきれず、凍結が起こる可能性があります。そのため、マンションのパイプシャフトや、戸建住宅の配管カバー内部など、適切な環境で使用することが効果的です。
樹脂配管用凍結防止ヒーターのラインナップ
GSLヒーター(株式会社TOTOKU)
GSLヒーターは、ヒーターガイド管がない保温材付きの架橋ポリエチレン管やポリブデン管に最適な製品です。このヒーターの発熱体は幅が5.6mm、厚みが3.6mmと細く薄いため、保温材とパイプの間に容易に挿入できる設計になっています。また、発熱体の表面はフッ素でコーティングされ、塩ビ管や継手に使用しても可塑剤移行による脆化の心配がありません。耐熱温度が105℃まで対応できるので、多様な温度範囲で使用することが可能です。
なお、自己温度制御型なので、一年中微電流を流して周囲温度を検知し続けるため、外気温が5℃まで下がると通電を停止する節電コントローラーを併用することを推奨します。これにより、一層効率的な運用が可能となります。
ESヒーター(株式会社TOTOKU)
ESヒーターは、金属管はもとより樹脂管(架橋ポリエチレン管やポリブテン管)にも使用できる用途の広さが特色です。自己制御型のため、単体での完全なON/OFFはできませんが、サーモスタットが無いため長寿命です。また、通電開始時の初期抵抗が低いため、急な冷え込みでもスピーディに昇温します。
EFHヒーター(山清電気株式会社)
エコフィットヒーターも、ヒーターガイド管付架橋ポリエチレン管・ポリブデン管のために開発された商品です。発熱体部はφ4.5mmと細く、ガイド管が無い保温材付樹脂管でも挿入しやすい設計です。コントローラーに内蔵されたサーモスタットは外気温度を検知し、5℃以下でON、5℃以上でOFFの動作でー10℃までの凍結防止が可能です。ニクロム線ヒーターにフッ素樹脂をコーティングしているため、可塑剤の移行がなく、耐熱温度も120℃まで対応できるため、塩ビ管にも安心して使用できます。
DSRXヒーター(電熱産業株式会社)
「現場が金属管か樹脂管か分からない」そんな時は、金属管・樹脂管両用のDSRXヒーターさえ持っていれば安心です。自己温度制御型なので、1本で給水管・給湯管の両方に凍結防止を行う事ができ、屋外コンセントの不足している環境にも便利に使用できます。また、金属メッシュを施してアースもしっかりとれているため、落雷が多い地域の樹脂配管に対して、ぜひお使いいただきたい商品です。
注意すべき点として、DSRXヒーターがオンになった際には、通常の1.5~2倍程度の突入電流が流れることが挙げられます。そのため、コンセントからの分岐を行う際には、より高い許容電流値を持つDSR専用サーモスタットの使用を推奨します。電流の急激な増加に対応し、安全性を高めることが可能です。
まとめ
凍結防止ヒーターの選定には、配管の長さだけではなく、材質も重要な要素として考慮する必要があります。さらに、消費電力量、作動検知方式、パイロットランプの有無なども選定基準として考慮することが重要です。これらの要素を総合的に評価することで、各環境に適した最適な凍結防止ヒーターを選ぶことができます。実績の多いシリーズとしては、金属配管にはPLDシリーズが、樹脂配管にはESシリーズがあげられます。凍結シーズン、寒波到来時の万が一に備えて、お手持ちのヒーターを見直してみてはいかがでしょうか。
※2023年11月30日に公開した記事を修正し直し、2024年12月23日に改めて公開いたしました。

佐藤 陽子

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