冷暖房設備の流量管理に便利なバイパス式流量調整バルブ
本稿は2020年4月14日に公開しましたが、一部を加筆、修正し2021年9月3日に再公開しました。
勘に頼らずメモリを見ながら流量を調整できる
各放熱端末に適切な流量を供給するには、過大に流れている回路の流量を制限し、その他の回路へ循環水が流れるようにします。規模が大きい現場では圧力損失などを計算の上、定流量弁を用いて制限することが一般的ですが、住宅や中規模の設備では施工業者様の勘を頼りにバルブの開度で流量を調整している現場があります。「バイパス式流量調整バルブ」を用いれば、流量を可視化し勘に頼らずカンタンに流量を調整することができます。
バイパス式流量調整バルブの構造
図1のように、循環水がバルブ下方から上方へ流れるように設置します。流量を確認したい時は、円形のピンを引っ張るとバイパスの流量計部に循環水が流れ込みフロートを持ち上げる仕様です。フロートの赤い部分にマグネットが内蔵されているので、④金属ボールが連動してメモリ部を上下する仕掛けになっています。
バイパス構造だから低圧損
円形のピンを引かなければバイパスの流量計部に循環水が流れ込まないので、運転時の圧力損失を低く抑えることができます。循環水は流量計測時であっても⑤メモリ部に直接流れ込むことはなく、万が一メモリ部分を損傷してしまっても漏れ出すことはありません。また、流量計部に異物が詰まる確率も非常に低く安心です。
バルブ操作で流量調整がカンタン
流量が設計流量より多い場合、内蔵のバルブ部①の軸②をマイナスドライバーで回転させることで流量の制限を行うことができます。
置針付だから異常を発見しやすい
メモリ部にある赤い置針は手で動かすことができます。予め設計流量に合わせておけば、流量低下などの異常をいつでも発見できます。
ジャストフィットの専用保温材付き
「バイパス式流量調整バルブ」には、厚さ10㎜の専用保温材が付属します。バルブの施工が終わった後に専用保温材を被せて、併せ面のマジックテープで止めるだけのカンタン施工。専用品ですので隙間がなく、放熱ロスや結露を抑えます。
口径と流量が異なる5つのラインナップ
品番 | 流量範囲 | ねじ | 全長 |
132402 | 2~7L/min | G1/2 | 145mm |
132512 | 5~13L/min | G3/4 | |
132522 | 7~28L/min | G3/4 | |
132602 | 10~40L/min | G1” | 158mm |
132702 | 20~70L/min | G1”1/4 | 163.5mm |
実際の導入事例
写真は弊社ベストパーツマージセンターの冷暖房設備に取り付けられているものです。この流量調整バルブを複数個所に設置してエリア毎の流量調整をできるようにしています。試運転時は、何の調整もせず循環させたところ設計流量に対してエリアによって過不足がありましたが、「バイパス式流量調整バルブ」を使い調整することでバランスよく循環するようになりました。
まとめ
冷暖房設備において循環液の流量調整は、引渡し後の快適性、満足度を左右する重要な要素のひとつです。引き渡し後でも回路ごとの流量を目視確認しながら容易に調整できる「バイパス式流量調整バルブ」を設置すれば、不具合箇所の早期発見、メンテナンスや調整作業の時間短縮につながります。冷暖房設備を設計される際にはぜひ導入を検討してみてください。
大宮彰大
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