本格的な温水暖房を安く早く実現する「連結ヘッダー組662」

温水暖房システムの設計・施工において、多くの専門家が直面する課題として、コストパフォーマンスは高いが機能に限界のあるCHヘッダー、施工時間が長く漏水リスクのある温水ヘッダーKH型、予算を超えるシステムヘッダーセット668などが挙げられます。これらの製品はそれぞれに利点と欠点がありますが、もう一つの選択肢として連結ヘッダー組662をご紹介いたします。この組合せ式ヘッダーは、シール剤を使用せずに漏水のリスクを最小限に抑えることができ、また、ヘッダーバルブにアクチュエーターを取り付けることで、回路ごとの細かい流量制御が可能です。本稿では、これらの特長を活かし、手頃な価格で効率的なゾーンコントロールを実現する「連結ヘッダー組662」について詳しくご紹介します。

連結ヘッダー組662は安価で多機能

CALEFFI(カレッフィ)社がアジア市場向けに開発した温水暖房システムの一部である連結ヘッダー組662は、特に予算を考慮した設計に適しています。一方、もう少し予算の余裕がある場合は、流量計、バイパス管、温度計接続口、エアベントなどが組み込まれている上位モデルのヘッダーセット668の使用が推奨されます。ただし、連結ヘッダー組662は、ヘッダーセット668に比べて約30%の圧損が増加する点を考慮する必要がありますが、内蔵されたヘッダーバルブにアクチュエーターを取り付けることで、さらに機能を拡張し、カスタマイズすることが可能です。また、別売のヘッダーエンド(品番:599660)エアベント(品番:502430)ドレンコック(品番:538400)、さらにはバイパスキット(品番:182000)を追加することで、多機能で柔軟なシステム構成が実現できます。

アクチュエーターを取り付けられるヘッダーバルブが内蔵

連結ヘッダー組662の最大の特徴は、CHヘッダーと比較して、各回路ごとに流量を制御できる点にあります。この機能は、特にゾーンごとの快適性を重視する暖房システムにおいて重要です。連結ヘッダー組662は、往き側と戻り側の両方にヘッダーバルブを内蔵しており、これによりゾーンコントロールが可能になります。また、バルブはスピンドル式を採用しているため、従来のボールバルブとは異なり、より精密な流量調整が行えるのが特徴です。

往き側ヘッダーは白い蓋を外すと六角が出てくる

図1 白い蓋を外すと六角レンチで操作できるバルブが現れる。六角の対辺は5mm。

連結ヘッダー組662の往き側ヘッダーには、特別な設計が施されています。上部にある白いフタを取り外すと、内部に六角レンチで操作可能なバルブが内蔵されているのが見えます。このバルブは、時計回りに回すと「閉」の位置に、反時計回りに回すと「開」の位置に設定されます。製品が納入された際、このバルブが「閉」の状態になっていることがありますので、施工時には必ずこのバルブの位置を確認し、適切に「開」に設定することが重要です。

戻り側ヘッダーバルブにはアクチュエーターを接続できる

図2

戻り側ヘッダーには、手動ハンドル付きのバルブが装備されています。このバルブを使用することで、手動で流量を調整したり、循環水の流れを完全に止めたりすることが可能です。さらに、手動ハンドルを取り外し、アクチュエーターを取り付けることで、システムをコントローラを介して自動で制御することができます。この自動制御機能は、特に床暖房システムにとって不可欠です。また、パネルラジエーターを使用する場合でも、サーモハンドルによる手動調整よりも、アクチュエーターとコントローラを組み合わせた自動制御の方が、多くのユーザーにとって使い勝手が良いとされています。このため、アクチュエーターコントローラの組み合わせ使用が増えているのです。

662は現場に合わせて組み上げて使う

連結ヘッダー組662は、各現場のニーズに応じてカスタマイズが可能です。必要な回路数に合わせて、ヘッダー用ボールバルブ(フルボア)組(品番:391066)エアベント(品番:502430)ドレンコック(品番:538400)などの部品を選択し、システムを組み立てます。エアベントやドレンコックが不要な場合は、ヘッダーエンドキャップ(品番:599360)を使用してシステムの末端を閉じることができます。このように、「連結ヘッダー組662」は、現場の特定の要件に合わせて柔軟に構成を変更することが可能です。

ヘッダー組を連結して回路数を増やす

図3 「連結ヘッダー組662」は当日出荷!

品番主管枝管回路数
662625G1メスG3/4

(専用継手推奨)

2
6626353
6626454
6626555
6626656
「連結ヘッダー組662」のラインナップは、2回路から6回路までの範囲で提供されており、これらを連結することで必要な回路数に合わせたカスタマイズが可能です。ヘッダー同士を連結する際には、シール剤の使用は不要です。これは、あらかじめ取り付けられているEPDMパッキンにより完全な止水が保証されているためです。さらに、このシステムは最大使用温度80℃まで対応可能であり、様々な熱源器に対応する柔軟性を備えています。ただし、圧力損失を考慮すると、1回路あたりの流量を2リットル/分程度に設定し、最大で12回路までの使用を推奨します。

図4 連結ヘッダー組662はねじ込んで現場に必要な回路数まで連結して増やします。ヘッダー同士はEPDMパッキンで完全止水。シール剤は使いません。

フルボアのメインバルブを追加する

ヘッダーと主管を接続する際には、ヘッダー用ボールバルブ(フルボア)組(品番:391066)が必要です。このバルブは専用設計されており、すでに取り付けられているOリングを利用して接続部をシールします。このため、追加のシール剤を使う必要はありません。このシンプルながら効果的なシール方法は、取り付けをより簡単かつ確実に行うことを可能にします。

図5 「ヘッダー用ボールバルブ(フルボア)組(品番:391066)」は、往き側用と戻り側用各1個ずつの1組単位で販売しています。

品番ねじ
391066G1

ヘッダーエンドは2種類から選択する

ヘッダーシステムの末端には二つの選択肢があります。一つは、エアベントドレンコックバイパスキットを接続できるヘッダーエンド(品番:599660)です。もう一つの選択肢は、システムを単に閉じるためのヘッダーエンドキャップ(品番:599360)です。どちらの部材も、ヘッダーとの接続部にはOリングシールが用いられています。これにより、接続部の確実なシールが保証され、取り付けが簡単かつ信頼性の高いものになります。

「ヘッダーエンド(品番:599660)」

品番品名主管側上部下部
599660ヘッダーエンドG1メスG3/8メスG1/2メス
「ヘッダーエンドキャップ(品番:599360)」

図7 連結ヘッダー組662の末端を閉止する「ヘッダーエンドキャップ(品番:599360)」は当日出荷!

品番品名主管側上部下部
599360ヘッダーエンドキャップG1メス

電圧にあわせたアクチュエーターを選定

アクチュエーターをヘッダーシステムに適切に組み込むには、アクチュエーターの可動域とヘッダー内蔵のストップバルブのストローク長が一致している必要があります。この合致がなければ、システムは完全に止水されません。そのため、CALEFFIのヘッダーにはCALEFFI専用のアクチュエーターを使用することが推奨されます。例えば、110V仕様のアクチュエーター(品番:116001)は取り付けが非常に簡単です。ヘッダーにリングを手でしっかりと締め付けた後、アクチュエーター本体を上から押し込むだけで、「パチン」という音がするまで固定します。この簡単な手順で、アクチュエーターの取り付けが完了します。

図8 日本国内でもっとも使用されることの多い110V仕様の「アクチュエーター(品番:116001)」は当日出荷!

品番電圧消費電力コード長
116001AC110V1.8W100cm
3060002AC230V2.5W100cm

まとめ

アジア市場向けに開発された連結ヘッダー組662は、上位機種に比べて約30%の圧損が大きいものの、日本国内の一般的な住宅サイズにおける循環液の搬送能力には十分対応しています。この製品は、そのままコスト効率の高い温水暖房用ヘッダーとして使用することができるほか、高い拡張性を生かして密閉回路での自動制御装置としても活用できます。パネルラジエーターや床下放熱器などの高温端末と組み合わせ、効率的なゾーンコントロールを実現する温水暖房システムに最適です。

※この記事は2019年8月20日に公開されましたが、校正し直し2021年8月25日、2023年12月14日に再度公開しました。

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大宮彰大

営業部所属:ベストパーツ株式会社 2008年入社(36歳) 温水暖房分野を担当し2013年4月完成のベストパーツ株式会社社屋の冷暖房部材選定を行う。 MAIL:omiya.shota@best-parts.jp
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