ガス機器のCO中毒事故を未然に防ぐ給排気部材の選び方
※この記事は2022年1月20日に公開された記事ですが、校正し直し2023年2月21日に再公開いたしました。
給排気筒における抜け防止機構の重要性
年々住宅性能の向上が求められる今、一酸化炭素中毒から命を守るために給排気筒の仕様を見直しましょう。リベットやタッピングネジで固定する作業なしに工具不要でロックが掛かる、シーリング作業なしで気密や水密が保てるなど、新しいニーズをとらえた給排気部材を厳選してご紹介します。
※安全に燃焼機器を稼働させるための施工は、特監法「特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律」の概要に基づき行ってください。
FE式給湯器の排気筒外れの事例
洗面所に設置されたFE式給湯器の排気筒が浴室から居間の天井を通りベランダ側まで横引き配管されていましたが、浴室の天井配管が外れてしまいCO中毒事故が発生しました。
事故現場見取り図
所見
横引きが長い現場においては給排気筒の接続部が自重でたわみやすく排気漏れの確率が高まります。
FE式湯沸器の排気筒使用材料不適合の事例
FE式湯沸器からエルボまではステンレス製でしたが、天井内の横引配管部分が亜鉛引き鋼板製のスパイラル管であったため、そこから腐食して室内に排気ガスが充満しました。
事故現場見取り図
所見
スパイラル管は腐食性が高いため、給排気筒として使用してはいけません。同様の事故には、アルミダクトを使用した事例も見受けられますが、アルミダクトはもちろん、鉄ダクトや樹脂ダクトも法的にみとめられておりません。「排気筒の材料は、SUS304またはこれ以上のものを使用すること」と特監法「特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律」の施工方法の概要に定められております。
CO事故の再発を防止する給排気部材
排気筒の接続部は、「リベット、またはタッピングねじで固定し耐熱性のシーリング材で排気がもれないようシールする」と定められております。更に、隠ぺい部の接続には「ロック機構付きの排気筒」が推奨されておりますが、年々住宅の気密性能が高まる今、隠ぺいか否かに関係なくロック機構付の「SKPシリーズ」、「SEPシリーズ」の排気筒をオススメしています。
φ60SKPシリーズ給排気筒
品 番 | 有効長 |
SKP63 | 300 |
SKP66 | 600 |
SKP69 | 900 |
SKP612 | 1200 |
φ80SEP直管
品 番 | 有効長 |
SEP83 | 300 |
SEP86 | 600 |
SEP89 | 900 |
SEP812 | 1200 |
ALGCロックウール
隠ぺい部の排気筒には、厚さ20mm以上のロックウール等の金属以外の不燃材料で断熱措置を講ずることになっておりますので、「ALGCロックウール」も併せてご使用いただくこともお忘れなく。
品 番 | 内 径 | 肉 厚 | 適合排気筒 |
ALGC5020 | 61 | 20 | φ60 |
ALGC8020 | 89 | φ80 | |
ALGC1025B | 105 | 25 | φ100 |
ALGC1025 | 114 | φ110 | |
ALGC1225B | 130 | φ120 | |
ALGC1525 | 165 | φ150 |
吊金具
排気筒接続部にたわみが発生しないよう、支持金具を定められたピッチで取り付けてください。支持金具は、脚がスライド式で下り勾配もカンタンにとれる便利な「吊金具」を推奨いたします。
※注意・・・FE式の場合の横引配管は屋外に向かって先下がり勾配とし、原則として1.5m~2mごとに1箇所の割合でたるみが生じないよう堅固に固定してください。
品 番 | パイプ径 | スライド幅 |
GH60K | φ60 | 130~200 |
GH80K | φ80 | |
GH100K | φ100 |
工業用内視鏡
再使用する給排気トップ並びに排気筒は健全性を確認してください。特に大切なチェックポイントは溶接部。外観を目視だけでは分からない場合もありますので、「デジタルスコープ(品番:SDI-120)」を使用するとお施主様と画面を共有したり記録を残したりする事ができて便利です。
品 番 | 仕 様 |
SDI-120 | 工業用内視鏡 φ12 |
まとめ
特定ガス消費機器の施工は、特監法「特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律」に基づき実施してください。FE式排気筒接続方法は「リベット、またはタッピングねじで固定し耐熱性のシーリング材で排気がもれないようシールする」と記述されておりますが、FF式のみならずFE式であっても差し込むだけで確実なシールと抜け防止が担保できるロック機構付の給排気筒SKPシリーズ、SEPシリーズを利用することで、確実に事故を回避したいものです。また、ロック機構付の給排気筒を使用しない場合にご注意いただきたいのは、アルミ粘着テープは熱によりはがれてくる恐れがあり抜け防止措置にはならないので、必ずリベット、またはタッピングねじで固定し耐熱性のシーリング材で排気がもれないようシールすることです。
最後に既存の排気筒を再利用せざるを得ない場合、「デジタルスコープ(品番:SDI-120)」で内部を確認して記録を残すことも忘れずに実施してください。
星孝幸
最新記事 by 星孝幸 (全て見る)
- エコジョーズ給湯器の設置をもっと簡単に!φ100SEP 90°スライドエルボで時間とコストを削減 - 2024年2月19日
- 付加機能の多様化が進むコンベックス選びの新基準 - 2024年2月8日
- ブレなしで正確な穴あけ:マキタ18V充電式ドライバドリル(DF458DRGX) - 2024年1月31日