凍結防止ヒーターに種類が多い理由と選定ポイント

ベストパーツオンラインでは、11種129アイテム凍結防止ヒーターを取り扱っています。これらはただ無差別に選ばれたわけではなく、様々な現場に対応できるように厳選された最小限の品揃えです。

目次

なぜ凍結防止ヒーターにはたくさんの種類があるのか

凍結防止ヒーターの多様性は、異なる材質や長さの配管に対応するためです。最近では、消費電力量やパイロットランプの有無も選定基準として重視されています。したがって、各現場に適した凍結防止ヒーターを選ぶためには、多様なラインナップが必要なのです。

選定ポイント1:配管材質に合わせた発熱体を持つシリーズの選択

配管材料は、鋼管から銅管、塩ビ管、そして架橋ポリエチレンパイプやポリブデンパイプといった合成樹脂管へと進化してきました。金属配管が主流だった時代には、柔軟性を持たせるために軟質塩ビで発熱体を覆う技術が用いられていました。しかし、塩ビ管が主流になると、軟質塩ビに含まれる可塑剤が樹脂配管を脆化させることが分かり、発熱体の外層に金属メッシュやフッ素などの材料を使用するようになりました。

下表では、「鋼管・銅管」用の金属管シリーズと、「塩ビ管・架橋ポリエチレンパイプ・ポリブデンパイプ」用の樹脂管シリーズを示しています。

品名 シリーズ型式 配管材料
IFTヒーター(パイロットランプ付) PLD 金属管
IFTヒーター D
エコセブンヒーター ECO7
レギュラーヒーター RHE
GSLヒーター GSL 金属管・樹脂管兼用

※ES/ESLタイプは塩ビ管不可

ESヒーター ES/ESL
エコフィットヒーター EFH
自己制御型ヒーター DSRX
ドレン管用自己制御ヒーター TM

選定ポイント2:必要な長さの有無の確認

配管材料からヒーターシリーズを選んだ後は、現場で必要な長さの有無を確認します。特に、サーモスタット型凍結防止ヒーター(PLD、D、ECO7、RHE、EFH)は、必要以上に長いヒーターを選ばないよう注意が必要です。自己温度制御型は、重ね巻きが可能で、給水と給湯を一本のヒーターでまかなうことができます。

下表では、各シリーズごとにラインナップされている長さを示しています。

長さ(m) PLD D ECO7 RHE GSL ES ESL EFH DSRX TM
0.5
0.7
0.75
1.0
1.2
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
5.0
6.0
7.5
8.0
10.0
15.0
20.0

選定ポイント3:センサーの特徴と凍結防止能力の理解

ここでは、凍結防止ヒーターを選ぶ際の重要な要素である、センサーの特性と凍結防止能力に焦点を当てています。地域の気温や設置状況に適した凍結防止能力を持つシリーズを決定するために、以下の点を確認する必要があります。

  • センサーのタイプ: サーモスタット型と自己温度制御型が主なタイプです。
  • 通電温度と停止温度: これらは、ヒーターが作動し始める温度と停止する温度を意味します。
  • 発熱量(消費電力量): この要素は凍結防止能力を直接的に反映します。

万能タイプの「サーモスタット型」

ニクロム線ヒーターを使った「サーモスタット型」は、サーモスタットの働きで通電と停止を繰り返して無駄な電力消費を削減しています。よって、サーモスタット取付位置が重要です。意外と知られていないのは、サーモスタットには「配管温度検知式」と「外気温検知式」の2種類あるということ。外気温検知式の場合、サーモスタットを配管に密着させる必要がなく施工が容易といったメリットがある一方で、配管(流体)が温まっても外気温が低い冬場は通電しっぱなしになるため、電気料金の増加や過剰加熱の恐れがあります。よって、いろいろな考え方がありますが、配管温度検知式の方が無駄なく確実に凍結防止ができると言えます。

長い距離を1本でまかなうことができる「自己温度制御型」

「自己温度制御型」凍結防止型ヒーターは、周囲の温度に応じて自動的に抵抗を調整し、発熱量を増減させます。具体的には、周囲温度が低下すると抵抗が減少し、発熱量が増加する一方、温度が上昇すると抵抗が増加し、発熱量が減少します。この賢い制御により、「必要な箇所を必要なだけ温める」ことが可能となり、給水配管と給湯配管の両方を1本のヒーターでカバーすることができます。ただし、このタイプのヒーターは常に全体で周囲温度を検知し続けるため、電源コンセントが抜かれるまで微電流が流れ続けます。そのため、別売の節電スイッチを取り付けて電気料金を節約することを推奨します。

通電温度と停止温度、そして発熱量で凍結防止能力を知る

凍結防止能力は「消費電力量×運転時間」で決まります。たとえば、消費電力が15W/mのIFTヒーターは、3℃で通電し10℃で停止しますが、消費電力が12W/mのレギュラーヒーターは5℃で通電し13℃で停止します。低い発熱量を長い通電時間で補う設計です。現場の外気温の変化を考慮して選ぶことが大切ですが、極寒地では高い発熱量のタイプが推奨されます。

凍結防止ヒーター 仕様比較表
シリーズ型式 消費電力 サーモスタット検知方式 通電温度 停止温度 パイロットランプ有無
PLD 15.0W/m 配管温度検知 3℃ 10℃
D 15.0W/m 3℃ 10℃
ECO7 12.0W/m 外気温検知 5℃ 5℃
RHE 12.0W/m 配管温度検知 5℃ 13℃
GSL 11.5W/m 自己温度制御型
ES 10.0W/m 自己温度制御型
ESL 10.0W/m 自己温度制御型
EFH 7.5W/m 外気温検知 5℃ 5℃
DSRX 14.0W/m 自己温度制御型
TM 14.0W/m 外気温検知 3℃ 10℃

TMシリーズは自己温度制御型でサーモスタット付となります。

便利な機能:パイロットランプ

パイロットランプは、凍結防止ヒーターが通電しているかどうかを示すランプです。凍結防止ヒーターの寿命は使用年数ではなく、スイッチのオン・オフ回数に大きく左右されます。そのため、劣化の兆候を「可視化」するパイロットランプは非常に役立ちます。パイロットランプがないモデルの場合は、凍結シーズン前に通電テスターを使って機能確認を行うことが重要です。ヒーターが接続されているにも関わらず故障していて凍結が発生する、という事態を避けるためにも、この確認は必要です。

金属配管用凍結防止ヒーターのラインナップ

ここでは、金属配管用の凍結防止ヒーターシリーズを詳細に紹介しています。

IFTヒーター(電熱産業株式会社)

PLDおよびDシリーズは、業界最高の15W/mの消費電力量なので、金属配管に「沿わせるだけ」で凍結防止効果を発揮します。沿わせるだけなので、配管と外壁の間に隙間がほとんどなく凍結防止ヒーターを巻きつけることができない施工現場に有効です。なお、「巻きつける」と更に厳しい環境下でも凍結防止能力を発揮します。

IFTヒーター(パイロットランプ付) PLDタイプの詳細

IFTヒーターのPLDシリーズは、配管温度検知式のサーモスタット型でパイロットランプ付き

品番 消費電力(W) 発熱体長(m)
PLD-0.5 7.5 0.5
PLD-1 15 1
PLD-1.5 22.5 1.5
PLD-2 30 2
PLD-3 45 3
PLD-4 60 4
PLD-5 75 5
PLD-6 90 6
PLD-8 120 8
PLD-10 150 10
PLD-15 225 15
PLD-20 300 20
PLD-25 375 25
PLD-30 450 30
IFTヒーター Dタイプの詳細

IFTヒーターのDシリーズは、配管温度検知式のサーモスタット型

品番 消費電力(W) 発熱体長(m)
D-0.5 7.5 0.5
D-1 15 1
D-1.5 22.5 1.5
D-2 30 2
D-2.5 37.5 2.5
D-3 45 3
D-4 60 4
D-5 75 5
D-6 90 6
D-8 120 8
D-10 150 10
D-15 225 15

エコセブンヒーター(山清電気株式会社)

エコセブンヒーター(ECO7)は、節電を重視する方に最適です。このヒーターは外気温が5℃で徐々に通電を開始し、0℃に達するとフル通電状態になります。反対に、外気温が0℃で徐々に消費電力を減らし、5℃で完全に遮断することで、フル通電時間を他のヒーターより短くすることができます。

しかし、外気温度検知式のこのヒーターは、風が強い場所では配管内の急激な温度低下を感知しきれず、凍結が起こる可能性があります。そのため、マンションのパイプシャフトや、戸建住宅の配管カバー内部など、適切な環境で使用することが効果的です。

エコセブンヒーター(ECO7)の詳細

エコセブンヒーター(ECO7)は、外気温検知式を採用したサーモスタット型のパイロットランプ付き

品番 消費電力(W) 発熱体長(m)
ECO7-0.5 6 0.5
ECO7-1 12 1
ECO7-1.5 18 1.5
ECO7-2 24 2
ECO7-2.5 30 2.5
ECO7-3 35 3
ECO7-3.5 42 3.5
ECO7-4 48 4
ECO7-5 55 5
ECO7-6 60 6
ECO7-8 80 8
ECO7-10 100 10

樹脂配管用凍結防止ヒーターのラインナップ

ここでは、樹脂配管用の凍結防止ヒーターシリーズを詳細に紹介しています。

GSLヒーター(株式会社TOTOKU)

GSLヒーターは、ヒーターガイド管がない保温材付きの架橋ポリエチレンパイプやポリブデンパイプに最適な製品です。このヒーターの発熱体は幅が5.6mm、厚みが3.6mmと細く薄いため、保温材とパイプの間に容易に挿入できる設計になっています。また、発熱帯の表面はフッ素でコーティングされ、塩ビ管や継手に使用しても可塑剤移行による脆化の心配がありません。耐熱温度が105℃まで対応できるので、多様な温度範囲で使用することが可能です。

なお、自己温度制御型なので、一年中微電流を流して周囲温度を検知し続けるため、外気温が5℃まで下がると通電を停止する節電スイッチ(ランプ付き)を併用することを推奨します。これにより、一層効率的な運用が可能となります。

GSLヒーターの詳細

GSLヒーターは湯・水の配管を1本で渡すことができる自己温度制御型のパイロットランプ付き

品番 消費電力(W) 発熱体長(m)
GSL-0.5 5.8 0.5
GSL-1 11.5 1
GSL-1.5 15.9 1.5
GSL-2 21.2 2
GSL-2.5 26.5 2.5
GSL-3 31.8 3
GSL-4 42.4 4
GSL-5 53 5
GSL-6 63.6 6

ESヒーター(株式会社TOTOKU)

ESヒーターは、金属管はもとより樹脂管(架橋ポリエチレン管やポリブテン管)にも使用できる用途の広さが特色です。自己制御型のため、単体での完全なON/OFFはできませんが、サーモスタットが無いため長寿命です。また、通電開始時の初期抵抗が低いため、急な冷え込みでもスピーディに昇温します。

GSLヒーターの詳細

金属管・樹脂管兼用で幅広く使用できる「ESヒーター」は、リーズナブルな価格も魅力の一つです。

品番 消費電力(W) 発熱体長(m)
ES-0.5 5 0.5
ES-1 10 1
ES-1.5 15 1.5
ES-2 20 2
ES-2.5 25 2.5
ES-3 30 3
ES-3.5 35 3.5
ES-4 40 4
ES-5 50 5
ES-6 60 6
ES-7.5 75 7.5
ES-10 100 10

EFHヒーター(山清電気株式会社)

エコフィットヒーターも、ヒーターガイド管付架橋ポリエチレンパイプ・ポリブデンパイプのために開発された商品です。発熱体部はΦ4.5mmと細く、ガイド管が無い保温材付樹脂管でも挿入しやすい設計です。コントローラーに内蔵されたサーモスタットは外気温度を検知し、5℃以下でON、5℃以上でOFFの動作でー10℃までの凍結防止が可能です。ニクロム線ヒーターにフッ素樹脂をコーティングしているため、可塑剤の移行がなく、耐熱温度も120℃まで対応できるため、塩ビ管にも安心して使用できます。

エコフィットヒーター(EFH)の詳細

エコフィットヒーター(EFH)は、外気温検知式のサーモスタット型

品番 消費電力(W) 発熱体長(m)
EFH-0.5 3.8 0.5
EFH-0.75 5.6 0.75
EFH-1 7.5 1
EFH-1.5 11.3 1.5
EFH-2 15 2
EFH-2.5 18.8 2.5
EFH-3 22.5 3
EFH-3.5 26.3 3.5
EFH-4 30 4
EFH-5 37.5 5
EFH-6 45 6
EFH-6.5 48.8 6.5
EFH-7 52.5 7
EFH-7.5 56.3 7.5
EFH-8 60 8
EFH-8.5 63.8 8.5
EFH-9 67.5 9
EFH-9.5 71.3 9.5
EFH-10 75 10
EFH-15 113 15
EFH-20 150 20

DSRXヒーター(電熱産業株式会社)

「現場が金属管か樹脂管か分からない」そんな時は、金属管・樹脂管両用のDSRXヒーターさえ持っていれば安心です。自己温度制御型なので、1本で給水管・給湯管の両方に凍結防止を行う事ができるので、屋外コンセントの不足している環境にも便利に使用できます。また、金属メッシュを施してアースもしっかりとれているため、落雷が多い地域の樹脂配管に対して、ぜひ、お使いいただきたい商品です。

注意すべき点として、DSRXヒーターがオンになった際には、通常の1.5~2倍程度の突入電流が流れることが挙げられます。そのため、コンセントからの分岐を行う際には、より高い許容電流値を持つDSR専用サーモスタットの使用を推奨します。この対策により、電流の急激な増加に対応し、安全性を高めることが可能です。

DSRXヒーターの詳細

DSRXヒーターは自己温度制御型、かつ、アースの取れる金属メッシュ仕様

品番 消費電力(W) 発熱体長(m)
DSRX-0.5 7 0.5
DSRX-1 14 1
DSRX-1.5 21 1.5
DSRX-2 28 2
DSRX-2.5 35 2.5
DSRX-3 42 3
DSRX-4 56 4
DSRX-5 70 5
DSRX-6 84 6
DSRX-10 140 10
DSRX-15 210 15
DSRX-20 280 20

まとめ

凍結防止ヒーターの選定には、配管の長さだけではなく、材質も重要な要素として考慮する必要があります。さらに、消費電力量、作動検知方式、パイロットランプの有無なども選定基準として考慮することが重要です。これらの要素を総合的に評価することで、各環境に適した最適な凍結防止ヒーターを選ぶことができます。実績の多いシリーズとしては、金属配管にはPLDシリーズが、樹脂配管にはESシリーズがあげられます。これらのシリーズはそれぞれの配管材質に合わせた特性を持ち、効果的な凍結防止対策を提供します。

※この記事は2019年1月9日に公開されました、校正しなおし2020年10月20日、2023年11月30日に再度公開いたしました。

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佐々木 克仁

2001年ベストパーツ株式会社(旧東北綜合器材株式会社)入社。2002年より営業職。分類は給水給湯を担当。1976年生まれ。
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